音楽の未来

ジブリの『熱風』十二月号の特集は、
「ダウンロードできない音楽」。
中村正人、クリスペプラー、川上量生
佐久間正英高橋健太郎らが寄稿している。
佐久間正英の原稿を一部抜粋。
 ↓
他のアーティストもそうだと思うんですが、
音楽というのは、作ってレコーディングして
自分の手を離れてしまったら、それはもう
アーティストのものじゃないと思うんですね。
(略)
だからいったん手を離したものを自分のものだと
言い続けるのは非常に幼稚な行為だなという気が
するんです、
だって商品として発売しちゃったんだから。
それが嫌だったら、発売しちゃいけない。
そこから先は聴く人のためのものだと思うから、
聴く人が自由にできるのが一番いい。
そういう意味では、聴く人が自由にコピーできても
いいんだと僕は思っているんです。
いつまでも作る人のものだったら、もちろんアートとしては
成立するけれども、それはもはや商品ではないですね。
やっぱりアートと商品の区別、分別がちゃんとできていないと
いけない。
音楽というのはもちろんアートの部分もあるけど、
アートとしてどこまで保存したいかにこだわるのであれば、
マスプロダクトにしちゃいけないわけで、
それはダウンロードできない音楽にすればいいと
思うんですね。
(略)
ぼくがいたバンド、プラスチックスは、最初
ラフトレコードというイギリスの小さなレコード会社から
シングルが出たのですが、解散して約10年後、
たまたまそのラフトレコードに行く機会があり、
初めて社長に会ったんです。
その時、何も言ってないのに、こちらの顔を見た途端に、
「あ、プラスチックスでしょ?」って。
ぼくと会ったこともないのに、10年経っても
社長がプラスチックスを知っている。
(略)
やっぱりレコードビジネスなんていうのは
こういうことなんじゃないかな、こういう規模のこと
なんじゃないかなと思いました。
それは本当に日本とのやり方の決定的な違いなんです。
日本のソニーだって東芝だって、
なんであんなにでかいビルなんだろう、
ということなんです
(笑)。
もともと音楽はそんなものじゃなかったのに、
日本は最初にハードメーカーという大きな資本があって
始まってしまったビジネスだから、
不幸なスタートなのかもしれません。
巨大な船があって、そこに集まった人たちは
一生懸命やろうとしていたんだと思うんだけれど、
先に船があったばかりに、
その船を沈没させないために、とにかく枚数を売らなきゃ
ダメだっていう本末転倒なことになってしまった。