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スタジオジブリのフリーペーパー
『熱風』七月号。
宮崎駿のインタビュー、最高やわ。
文責…宮崎駿
◇この原稿は編集部が行ったインタビューをもとに
宮崎駿監督が質問を含め…あらたに書き起こしたものです。
と、キャプション付き。
以下、抜粋。
「あなたが手にしている、そのゲーム機のようなものと、
みょうな手つきでさすっている仕草は気色わるいだけで、
ぼくには何の関心も感動もありません。
嫌悪感ならあります。
その内に電車の中でその妙な手つきで自慰行為のように
さすっている人間が増えるんでしょうね。
電車の中がマンガを読む人間だらけになった時も、
ケータイだらけになった時も、ウンザリして来ました。」

「田舎で仕事が出来る人間は、それがなくても出来ますよ。
出来ない人間は、何を持ったって出来ませんよ。」

「恋人といる時も手に持って、討論している時も手に持って
……手に持たないでいっそ頭に埋め込んだら(笑)。
机の上にパソコンがあるだけで、うつ病になる人が増えたんだから
頭に埋めたら、漱石が予想したとおりみんな神経衰弱で
自殺するでしょうね。」

「あのね、誰にでも手に入るものは、たいしたものじゃない
という事なんですよ。
本当に大切なものは、iナントカじゃ手に入らないんです。」

「じゃあ、ためしにあなたのiナントカで、
ぼくの知りたい事を調べてくれますか?
安宅型軍船の漕手の給水はどうやってたのか?
めしはどうしてたのか?行動中に漕手の交代は出来たのか?
櫓がぶつかったら何がおこるのか?……いくらでもあります。
戦闘になったら…漕手には外はまったく見えないので、
どういう心理状態にいたのか?どこにも出てませんよ、確信できます。
あなたのiナントカで出て来る画像なんぞ参考になりません。
八王子の信松院にある武田の安宅の模型や船の科学館の模型の方が
ずっとましです。
ぼくが知りたいのはソフトの部分なんです。
それは、他のいろんな記録や文書から推測するしかないんです。」
文献を調べて取り寄せる聞き手に対して
「あなたの人権を無視するようですが、あなたには調べられません。
なぜなら、安宅型軍船の漕座の雰囲気や、
そこで汗まみれに櫓を押しつづける男達への関心も共感にも
あなたは無縁だからです。
世界に対して自分で出かけていって想像力を注ぎこむことをしないで、
上前だけをはねる道具としてiナントカを握りしめ、
さすっているだけだからです。
一刻も早くiナントカを手に入れて、
全能感を手に入れたがっている人は、おそらく沢山いるでしょう。
あのね、六十年代にラジカセ(でっかいものです)にとびついて、
何処へ行くにも誇らしげにぶらさげている人達がいました。
今は年金受給者になっているでしょうが、
その人達とあなたは同じです。
新製品にとびついて、手に入れると得意になるただの消費者にすぎません。
あなたは消費者になってはいけない。
生産者する者になりなさい。」